やってはいけないリノベーションとは
 

「やってはいけない」ポイントをやらなければ、「心地よさ」は空間に蘇ると思います。改装のプロにご依頼される際にも、このポイントをきちんとお伝えされることをお勧めします。ただきれいにする、ただ他と少し変えた・・・だけではなく、お金が生まれる空間作りのために・・・。

やってはいけない!その1 【 新築そっくり 】

決して、「新築そっくり」にしてはいけません。
新築そっくりなら、本当の新築の方がいいに決まっています。新築そっくりとは、新築で使われている建材で、新築の内装と同じように仕上げることです。新築そっくりに改装する費用をかけた割には、数年後には、今より築年数は重ねる&新築でもない・・・と見込みがありません。

あくまでも、そこにあるものを活かし、心地よいものに再生すること。
新しい・きれいにすることがリノベーションではありません。前回にもお伝えしたような、「リノベーションだからこそ使える素材感」をふんだんに活かし、旧くなった共有廊下や、サッシの色、ベランダのシミなどにもバランスが取れるように、それらが活かされるような「味」を、ヴィンテージ感をセンス良くだし、選ばれるようにすることが長い目で見た時の武器になると思います。

●センスが良い新築・・・・これは数年後には新築ではなくなります。
●センスがない新築
・・・・これも数年後には新築ではなくなります。新築でもセンス力がない物件は厳しい?
●旧くてセンスがない物件
・・・・家賃を下げるしかありません。
●旧いけど、そこにしかないいい雰囲気を出した物件
・・・・数年後も多少の改修程度で人気物件に成り得る。

強敵は、センスが良い新築ですが、新築が醸し出すセンス力と、リノベーションのヴィンテージのセンス力は、決して同じではありません。 

やってはいけない!その2 【 デザインリフォーム 】

デザインの定義は大変難しいですが、デザインは時代に左右されるものです。
全体を長い目で見る必要がある場合、「心地よい」センスをベーシックに「ロングライフデザイン」をお勧めします。

少し時代を取り入れたデザインをする場合も、将来的にコストをできるだけ変えずにイメージチェンジできる箇所・素材にするなど・・・。全体のバランスをみた考えられたデザインはもちろん必要ですが、高価なかっこいい輸入商品をつけたりする・飾り天井を作ってみる・カラーや模様をつけてみるだけに注力されて「心地よさ」「全てのバランス」を忘れたかっこよさは、もちろんの事、客付けに苦労します。

ストライプのジャケットに同じストライプのシャツを合わせて着る・・・ような物で、ストライプが好きなら、せめてシャツは無地にする・・・など、デザインを生かすためのバランスは重要です。
リノベーションは、100人のデザイナーが居たら100人のデザインが上がってくると思います。ただ、「ビジネス」という視点で、残すもの、再生するもの、追加するもののトータルバランスを持ってデザインをしないと、ただのかっこいい部屋になりかねません。

やってはいけない!その3 【 同じ仕様 】

同じ築年数、同じ間取りでも、物件や条件によって再生方法は違います。問題点はもちろん、再生ポイントも違う場合がほとんどです。その部屋の問題点は何か、何を排除する必要があるか、窓からの光の色にあう色は何かなど、その部屋にあわせたコーディネートをする必要があります。何かしっくりこない、心地悪い空間ができ、それは入居者にも無意識に伝わります。手間は多少かかりますが、一つ一つ微調整でも検討する必要があります。

30代男性に人気の高級時計を、同じ年代の男性の誰もが腕につけても似合うのかどうか・・・。部屋もそれと同じだと思います。隣のマンションがリノベーションプランで成功したらしい。あの色とこの品番でうちも・・・では、決して同じものができません。その部屋にあわせたものを考えなくてはいけません。同じ品番・素材の組み合わせでも、カラーの配分・貼る位置・面積など・・・ほんの少しの調整だけでも違います。ハンコのようなリノベーションでは、「無意識にここに住みたい」と思わせるものはできません。

やってはいけない!その4 【 固定概念 】

リノベーションは自由です。
そして住む人も自由です。住む人の発想やインテリアセンス力はアップしていますし、それに関する店舗や商品も充実してきています。たとえば、収納。「扉をつけないと・・・」ではなく、可動できるようにした棚を設置する・・・だけでも十分。「自分が住んでみたら・・・」を想像できやすいようにすること。

もちろん、コストがかけられるなら、扉もつけたほうが良いかもしれません。でもコストをかけてまでしなくてもいい所は沢山あります。部屋の全体のイメージのバランスから、逆に扉を付けずに、色や素材で雰囲気をつくるオープンスタイルのほうがいい場合もあります。
「収納には扉」などの固定概念があると、自由な発想で生まれるそこにしかない部屋は生まれません。そこで生活する自分達のイメージをわかせる。「あ、これもできる、あれが似合いそう」と選ぶ人が想像する余白を残すこと。
想像を引き出させるポイントをさりげなく(?)組み込む事も、色や素材を考える際に必要です。

やってはいけない!その5 【 ターゲット 】

「ターゲットは誰にしますか?」と相談した際に、「ターゲットを決めると、枠が少なくなる。誰でも住めるようにしたい」というお話がたまにあります。100人いたら1人しかいないような特殊なターゲットを決める必要はありません。もちろん、それはそれでとても楽しく、競争にならないニッチな人気物件になるので賛成ですが・・・。

でも、年代や職業、ライフスタイルに合わせたターゲットを大まかにも決めないと、内装も集客告知もぼやけてしまいます。ぼやける要素をできるだけなくすように、たとえば独身社会人男性(会社勤め)・独身男性(工場勤め)・新婚子ども一人 などのざっくりとしたターゲット設定は必要です。
ある程度ターゲットを決めて、プランや告知を設定したとしても、集客枠が少なくなることはありません。その人に向けてきちんと「心地よい」がバランス良くできた部屋は、誰が見ても「心地よい」からです。

やってはいけない!その6 【 中途半端 】

中途半端はいけません。中途半端は一番どうしようもありません・・・。「中途半端」にするにしてもそれなりのコストはかかります。が、中途半端にしたことによって、見向きもされない。よって空室・・・の悪いスパイラルに陥ります。例えば、「旧くなった浴室を交換する費用はないけど、和室を洋室に変えてほしい」という話。この部屋に入居者が決まらないのは、本当に和室だろうか・・・と考えます。

浴室が旧いこと?ライフスタイルに合わない和室? 限られたコスト内で蘇らせるためには、コスト内で改善できる問題点は何か、コストに見合う治療方法は何か、を見極める必要があります。「コストがないから、できることだけ」を中途半端にすることはお勧めできません。中途半端に洋室に変えるのではなく、畳の表替え・クリーニングだけなどをして、家賃を少し落してまずは改修費用ができるまでの入居者を探した方がよほどいいと思います。

どの問題点も本当にコスト内では改善できそうにも無い場合、私たちはいつも、「色の交通整理だけしましょう」とお伝えしています。旧くても、少しライフスタイルが逆行していても、クロス・床材はそのままで、巾木だけの色を変えるなど、色のバランスが整うことで、心地よさが変わります。

「よし、リノベーションだ!」「宝を蘇らせるぞ!」と思われる際には、是非今回のポイントもご参考下さい。今回のコラムの内容は、日々私たちが改修前の部屋に入った際に常に考えている事です。「改修」するだけではなく、かっこいいものだけをつくるのではなく・・・何か一つでも結果に近づくお手伝いができればと思う気持ちの根底にあります。